冷たく澄み切った空気が行き渡っているような空気感の水彩画です。スイス・マッターホルンの麓から眺めた光景ですが、雪のマッターホルンと日陰の麓の対比がこの絵に緊張感を与えています。遠近感も申し分なく、写真では表現出来ない手技の勝利であります。
この絵、実は安野光雅氏の手によるものであります。安野さんは比較的穏やかな景色をお好みとばかり思っていましたから、このような画趣のものをみつけたので、少し見直してしまいました。手前よりも奥の山並みに焦点を当てたセンスもなかなかですし、とりわけ、全体のトーンに冷たいながらも温かさを感じるのは、陽を浴びて反射する何も塗らない紙の効果とは、恐れ入りました。
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