広重・品川御殿山
広重が好んで描いた品川周辺のモチーフの中でも、この『品川御殿山』と題されたものほど、安政の黒船来襲以降の幕府の海上防備に、ここの土をお台場整備に掘削したことを解り易く表わしているものはありません。
それ以前は徳川吉宗お手植えの桜が江戸の名所となっていて、このような惨めな状況ではなかったのでしょうが、海側から望んだアングルの絵は少なく、葛飾北斎の描いた御殿山のお花見の様子が往時の華やかさを伝えてくれます。
この辺り、明治以降は益田家・日比谷家邸宅となり現在は東海道線がど真ん中を縦断しています。手前は善福寺あたりでしょうか。橋の辺りは国道15号線・第一京浜と呼ばれる大動脈でありますから、今ではこのような風雅な景観は何処にも遺っていませんが、ちょっと奥に入ると僅かながら江戸の薫りが微かに薫ってくるような気配があります。
この広重の描いた崖に似たような景観の写真が残っていて、これは横浜根岸(レストラン・ドルフィンを下った辺り)のものですが、雰囲気だけでも感じて戴ければ・・・。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント