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2008年6月 6日 (金)

アルフレッド・ウォリス『干潮』

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アルフレッド・ウォリス(1855~1942)は、イギリス、コーンウォールの港町、セント・アイヴスで船具商を営み、七十歳になってから独学で絵を描き始めた異色の画家です。その登場のきっかけは、1928年、セント・アイヴスを訪れた画家ベン・ニコルソン、クリストファー・ウッドが偶然ウォリスの家の前を通りかかり、壁に掛かった彼の絵を目にしたことによります。その作品は、船乗り、船具商としての前半生を反映するように、荒海を航行する帆船や、汽船、灯台、セント・アイヴスの港や街の情景などを、ボール紙の切れ端や板に船舶用のペンキや油彩で描いたもので、現代の美術が失った素朴な味わいに満ちています。ウォリスのイギリス美術界への登場は衝撃的で、ニコルソン、ウッドは一時期ウォリスに影響されプリミティヴな風景画を描いていたほどです。

アルフレッド・ウォリスが描いた(制作年不詳)『干潮』と題されたこの絵は 『陸に上がったカッパ』の例え通り、環境が変われば本来の力が発揮できないような場面を描いています。漁夫・船員・船具商と海にかかわる職業を経たウォリスの絵には、なまじっか美術の専門教育を受けずとも、迫力のある構図・実学で学んだ距離感・独特のバナキューラ(その地域にみられる特異性)に満ちた色感がありますから、見ごたえがありますし、そこには読み取る愉しささえ見出すことが出来ます。

この干潮時の輸送船も動くわけではないですが、きっとウォリスの船に関わる記憶の中にこの場面が何か意味を持っていた出来事でもあったのかも知れません。いかにもイギリス的なグリーンはまるで、昔のMGなどのライトウエイト・スポーツカーの塗装色と同一色相ともいえ、ひと目でイギリスの絵だ・・・と判ってしまうところも、なかなかなのであります。

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