鈴木信太郎の『伊豆の漁村』・1963
晩年の鈴木信太郎は多くの伊豆の風景画を描いていて、年を重ねる毎に、色・構成ともにシンプルとなっていきます。
この『伊豆の漁村』と題された一枚は、バイオレットを含んだブルーの空の色が特徴で、鈴木には珍しく、遊び心に溢れた雲ひとつない空模様です。この空の色に彩度・明度ともにみごとに合った港風景が鈴木信太郎独特の緑色をベースに展開しています。深く静かな景色なのに、光を感じ、何ともいえない清潔な印象を与えてくれます。さらに、画面構成も右手前の家の屋根を強調して描いてますから、画面が遠くまで広がりをもっていますし、遠くの漁村の家をキュービックにまとめて抽象化していて、漁村のもつイメージとは遠いモダンな画趣に仕上がっています。これも、鈴木信太郎の画面采配魔術の典型の一枚でしょう。
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