「今よりは春になりぬとかげろふの下萌急ぐ野辺の若草」(続拾遺集)
和菓子の世界で春のお告げを象徴する大テーマのひとつが『下萌』で、全国の和菓子屋さんは競ってこの普遍的御題に挑戦しています。
土中から萌え出した草や芽などを象徴的・抽象的に表現するのですが、この一品などは珍しく土の地割れから覗く草が渋いながらも、彩りのコントラストによって、はっきりした造形として完成されています。
土の質感を主題に見立てたところなどは、この職人が、相当茶道を嗜んでいて、茶碗にも造詣が深く、特に、土物の素材がお気に入りではなかろうか・・・、などと勘繰ってしまいます。
『下萌』 京都・松寿軒
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