鈴木信太郎の岩と波
1964年(昭和39年)、房総の外海を描いたものです。房総の外海は荒々しい波が岩に打ち砕かれた、強いイメージを持っていたのですが、この絵では鈴木信太郎らしい明るく親しみのある画面になっています。
対象をそのまま描くのではなく、自分の今感じていることをキャンバスにぶつけることが絵画の存在なのだ・・・などと絵画論の前段で金科玉条のように聞かされた話でありますが、この絵などはその講義のサンプルとして最も適している内のひとつでしょう。
海の群青色を僅かに示す程度で、波の砕かれた白い泡が外房の海の激しさを表現してくれていますが、全体を覆う鈴木調ともいうべき洒落たまとまりは、いつ見ても心が穏やかになります。
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