鈴木信太郎の『ざくろ』・1939年
鈴木信太郎の静物画は、お得意の色のバラエティーショーで、複雑な色相同士の組み合わせが鈴木でしか出来ない芸域に達しています。
この『ざくろ』と題された一枚は、対象を凝視した上で自分の境地に仕立て上げる芸術の真髄とも言えそうな一枚で、私の好きな静物画の筆頭であります。とりわけ、半抽象化されたざくろがそのシズル感を観る側に運んでくれて、すっぱいざくろの酸味が目から喉に移行しそうです。ざくろの皮の黄色が白・バーミリオン・コバルトマゼンダ・グリーンなどの色同士を有機的に結びつけて、美しく格調の高い画趣にまとめられています。
コントラストをつけながらも、ソフトランディングさせている鈴木信太郎の構想と技量は、やはり格別です。
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