室内装飾家として、多くの壁紙の装飾図案もこなしていたデュフィですが、方や、このようなシンプルな素描も遺しています。
デュフィの自宅兼アトリエで描かれたと思しきペン画には、素早く描いた筆勢が優雅な印象のデュフィとは相反する感性を表現しています。おまけに、線の動きに伴い出来たインクの溜まりさえも、あたかも、全体とのバランスを計算つくしたような位置にきちんと収まっているところなど、偶然中の奇跡としか、いいようがありません。さらに、ヴァイオリンを弾くモデルの立ち姿の重心は一寸の狂いもなく、さらっと仕上げたかに観えるこの作品にもデュフィの神経張り詰めた緊張感が伝わって来そうであります。
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