1953・ 東京駅
駅が主人公的役割をする映画は古今東西ありますが、それも一昔前の列車の出入口や回廊が恋愛ドラマの組み立てに一役買うからで、今のような事務的設計車両となると、映画のテーマはハードな空間では成立せず、それよりもソフトな時間表の錯誤から展開する人間の欲望・犯罪ドラマに移行するのは自然な成り行きかも知れません。
さて、父と一緒に初めて名古屋に特急つばめに乗った前年、1953年の写真です。最後尾は今で言うVIP用だったか、特等車だったか定かではありませんが、このようなお別れの儀式の舞台としても恥ずかしくない様子が観られます。名古屋まで6時間ほど掛かったように記憶してますから、のんびりと景色を観つつ、素晴らしき日本の四季の移ろいを享受できたわけですし、この十一年後には新幹線が出発するなど想いもしなかった頃です。
父にせがんで譲ってもらった、帝国ホテル運営の食堂車のテーブルに置かれた、ガラスの文鎮が美しく光を浴びて輝いていたのが印象深く、白いテーブルクロスが子供の眼にもずいぶんと豪華な列車という感がありました。
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