広重の様式美。
諸国観光振興のお抱え絵師として江戸時代末期の旅人に絶大な人気だった東海道シリーズとは作風の異なる一枚ですが、これも人気シリーズ・富嶽三十六景の中から、山梨県大月から望む富士山です。
今も、中央高速を諏訪湖方面に向かい、河口湖方面との分岐に差し掛かると、快晴・無風であれば左手から姿の良い富士山が観えます。この絵ほどではないものの、北側方向から望む富士山は南側から観るときより、立ち上がっていて、日のかげる頃、この姿を観るとドキッとさせられるほど、不気味な感じをうけるときがあります。
さて、ずいぶんと花鳥風月の様式美そのままというか、京都の友禅絵師の下絵のような、広重らしからぬ風雅な画趣ですが、秋の寂しさがひたひたと忍び寄ってきそうな気配が、単純な技法ながら伝わってきます。
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