魚眼の見え方
1967年頃、大学ではプロダクトデザインを専攻し、課題との格闘が続く毎日でした。課題の範囲も「電動ドリル」のような基本機構と外観だけのもあれば、「日本の工芸の現状と展開について」などという学生の範疇でない国内永遠のテーマのようなものもあって、デザインなどというせせこましい範囲を逸脱したものが多かったのです。
時代は右肩上がりのイケイケムードの絶頂で、作れば売れる頂点の時代でありました。プロダクトデザインは工業デザインと同意語のようなものですが、コマーシャルセンス(市場で商品としての存在に優位性ありかどうか)を自覚するか否かで、発想もディテールも変化してしまいます。純真なデザイン少年だった多くの新入生は学年が上るにつれ、世間評価の[厳しさとお粗末さ]の不条理にもまれ、メーカー研修や市場調査のアルバイトの経験を通しデザインのもつ意味と現実を知ることとなり、卒業する頃には企業戦士としてのインハウスデザイナーの卵として送り出されていったのです。
その頃、初めて眼にした魚眼レンズに、仰天。魚の生態研究を元に開発されたこのレンズは、正に魚目線のシミュレーションそのもので、初めて知るお魚さんの水面下からの俯瞰に目からうろこであったのです。大学の写真科では何台か購入したものの、人気のトップでいつも貸し出し中といった有様。平凡なアルバイトで買える代物ではありませんから、スリリングなスキーアルバイトを掛け持ちして購入したモサもいました。
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