ホッパーさんの技術力。
画材にカートリッジペーパーという吸水性の少ない水彩画用の紙があり、これを使って描いてみると、滲み・発色のコントロールが極めて難しく、筆使いなどの訓練をアスリートのように地道に毎日継続していないと、画面にその練習不足が正直に表れてしまいます。正に水彩画とは水を制御すると云った点からも水制画といったほうが相応しいのでもあります。
さて、エドワード・ホッパーさんの描く経年変化した岬の家屋も、カートリッジペーパーの特性を知り尽くしたみごとな技術が隠れ忍んでいます。この紙は吸水性の少ない分絵具の滞留時間も長いので、サッサと描きつつも次の段取りと展開も計算しながら構想していかないと、思わないところで色彩の混濁が出始めたり・・・と、なかなかやっかいな紙素材なのです。ホッパーさんには、カラッとした陽射しの中でそのような心配をせずに一気に仕上げたかのような潔さがあります。手前のしっとりした草原のボリューム感と、フラットな木造の板壁とのコントラストから遠近感画生まれ、モダンなホッパーさんの真骨頂が出来上がってくれました。
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