鈴木信太郎の静物画には風景画に観られる明るく楽しい画趣が少なく、いわゆるアカデミックな薫りのする堂々とした画趣が多いのも不思議な感じを抱きます。
しっかりとした黒線で囲まれた各モチーフは夫々が孤立化して、存在を競っています。ここでも鈴木信太郎独特のグリーンが活きていてこの画面がかもちだすイメージをコントロールしています。又、青い林檎や洋梨と思われる果物とガラス・陶磁器とが違和感なく溶け合って、この画家でしか為し得ない独自の趣きが画面いっぱいに散乱しています。さらになぜか、奥に見える独特の造形で浮いている雲が、この重くなりがちな画面に少しばかり軽さのスパイスを振りかけています。
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