1923年 父のスケッチ 麻布飯倉片町
大正12年、15歳の父のスケッチはハサミの刃を研ぐ職人さんの姿です。現在の麻布狸穴町IBMの脇を下った谷底のような場所に、父や兄弟と暮らしていた住まいからスケッチしたものです。お屋敷の多い植木坂上に抜けるこの道は現在も当時の面影が残されていて、私も父と生前、何度もこの界隈を散策しましたが、欝蒼とした麻布台の夏の蝉のうるささに仰天したものです。
ハサミも、今では材質の優れた耐久性モノが多いですし、切れなくなれば買い替えという御仁の多いご時勢ですが、昭和40年代まではハサミ・包丁研ぎを含め、家庭用品の修理をする仕事に携わる方々も多く、住宅街の週末は玄関脇で黙々と仕事する職人さんを見かけたものです。子どもにとって職人さんの持っている諸道具は夫々に役割があって、専門家としての微妙な調整を取り替えながら徐々に出来上がっていく様子は面白くもあり、不思議な雰囲気でもありました。
さて、この職人さんの手前に見えるのは、タバコ容れとキセルのようですが、一服しながら仕事をしている姿は長閑でありますね・・・。
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