紫陽花も自由自在に。
白の平絹地の背に、多数の花を付けた紫陽花の古木が、右裾から立ち上がり左肩へと大きな曲線を見せている。この模様の配置からは、寛文以降の小袖の大模様の雰囲気が伝わる。伝統的な模様や技法が用いられる能装束であるが、時代の好みが反映していることが窺える。縫箔とは刺繍と金や銀の箔を糊付けして模様を併せて用いる技法、あるいはこの技法が施された装束をいう。本作品には紫陽花の花の間に金箔が認められる。(サントリー美術館 日本を祝う展 解説)
と、そのようなことですが、紫陽花をこのように超現実的に飛躍した表現として用いるなど、能の世界のアバンギャルド感覚は想像を超えてますね。暗い舞台にかがり火で浮き上がった舞台ではその輝きも素晴らしかったでしょう。文様意匠だけの狭い世界に留まらず、トータルエンターテイメントのアートディレクションとしてコンセプトの軸足がブレないからこそ、このような超越した感性も正統の延長として継承されていくのです。
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