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2011年6月 7日 (火)

アルフレッド・ウォリス 『ロバがいた』

17  1930年代に描かれた、アルフレッド・ウォリスの『ロバがいた』と題された作品は、どこにロバがいるのだ!などと言われても困惑してしまいます。ロバらしき動物は右下の着彩されていない一頭のようで、どうやら「今はロバはいないのだが、嘗て、ここには働きもののロバがいたのだ」という作者自身の、今は亡きロバへのオマージュのような捉え方であります。

全体を覆う暗く深い色調は英国のお国柄そのものを象徴するようですが、作者はそんなことお構いなしに身近にある画材を、それも油絵具や船舶用ペンキを併用しつつ、一連の作品を心の思うまま、記憶に正直なまま描いたのに過ぎないところが、素晴らしいのです。

家・鳥・動物の対比も実際の大きさの比率など関係なく、まるで、映画の絵コンテのようなテーマ性を前面に押し出したような作品で、一瞬、観る側の想像力が試される、極めて厳しい作品に変身してしまいます。

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