梅原龍三郎・桜島
何だか、日向に出しっぱなしにして、色褪せてしまった印刷物に気付いたときには、「これはこれで、なかなか趣きのあるものだ」などと納得してしまったことが、あります。
綺麗な色よりも、ちょっとくすんだ色調は、この日本の風土・風景から生まれる独自のものでしょうが、その最高峰が、梅原龍三郎の一連の桜島シリーズです。主題の桜島をあるときは真っ黒に、またあるときは、緑青色に、そしてあるときは、茄子紺色にと自由自在・天衣無縫・・・といった調子で描き分けていますし、それぞれの画趣もまったく異なっていて、この梅原龍三郎の強烈なスタミナから生まれるエネルギーの爆発に圧倒されるのです。
死期が近づくのも関係なく、パワフルな食生活から生み出された、生涯肉食男子・梅原さんの作品を観ていると、やはり、アスリートと同じような、日々の繰り返し練習と、エネルギー満開な食生活が根底にあるのあということに、気付くのです。
この櫻島の画風は、重くもあり軽くもあり、明るいながら暗さもあり・・・といったように、全ての視覚感性を総動員してこのキャンバス内に封じ込めてしまいましたから、一年中、飾っておいても飽きないのであります。時代の流れは、このような画趣とは対極の軽く和む方向へと向かっていますが、私はまっさらな空間にこの梅原さんの力溢れた桜島の画が一点置かれている環境に、今も憧れています。
それにしても、桜島から上る噴煙の筆捌きにいたっては、ほとんど、ジャズにおけるアドリブのようなスリリングな趣きがたっぷりです。
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