松本竣介が1941年(昭和16年)12月に画いた油絵です。宣戦布告し、一気に戦いに向っていく正に、そのときに画かれた世界には、またもや、行く末を予感してしまった荒廃感に満ちています。
画かれた橋は八重洲橋といわれてますが、この作品は完全に松本竣介の世界として昇華しています。全体を覆うグレイッシュな色調にも繊細な色味が混ざり、冷たい画趣ながらどこか、優しささえ秘めています。
日本人の画というよりも、生きている画家の絵を目指したその視座には、発想と表現の折り合いがシンクロして、この画家しか表せない人工的都会の空気が流れています。
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