1922年頃 父のスケッチ 六本木
川端画学校の洋画部で毎日、藤島武二の指導のもと、デッサンやスケッチの特訓を受けた父が遺したものを観ると、ようやくスケッチにも自信がもてるような雰囲気になってきました。
この鉛筆スケッチは2B以上の濃い芯で画かれ、かなり擦れていますが、大正末期の宵闇の雰囲気が伝わってきます。14歳から15歳の頃と思われますから、川端画学校に入学し2、3年経過した頃です。
路面電車の灯り、電柱の灯りが闇夜の中に浮んでいていますが、周辺は現在とは比べものにならない暗さであったのですから、却って、美しい町並みが微妙なコントラストを通して、闇の色を醸しだしています。厳しい藤島武二の指導のお蔭か、闇にうごめく人々の姿も的確に捉えていて、15歳前後の少年の絵とは思えない完成度であります。
この2年後に、父は世界を席捲していた当時の前衛芸術運動の流れに自ら飛び込み、絵画修業も疎かになっていきます。
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