こういう羨ましい環境があったのですね。
実業家として成功し、この日本橋川界隈を好み、事業を重ねていった渋沢栄一の住居が、井上安治の版画によって、粋な仕上がりになっています。渋沢はベニスに見立てたこの場所をたいそう気に入っていたそうです。現在の東京証券取引所の場所辺りですが、井上の下絵に基づく版画は、物流経済の動脈であった日本橋川の夜も忙しい様子を、月夜の静寂さのなかに閉じ込めています。艪を漕ぐ舟の音が静寂な闇の中でひときわ甲高かったでしょうが、渋沢栄一は江戸の風情を残していたこの場所に暮らし、過ぎ去った懐旧の情景に浸っていたのでしょうか・・・。
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